日本の多くの医師は、2019年令和1年12月以降、中国武漢で発生した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)についての情報を集め、インフルエンザや感冒との鑑別に必要な研究をしました。中国からは、症状や死亡者の病理所見などの情報が大量に発信されました。
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2:severe acute respiratory syndrome coronavirus 2 ← 2019-nCoV:2019 novel coronavirus)は、重症急性呼吸器症候群関連コロナウイルス (SARSr-CoV:Severe Acute Respiratory Syndrome-related CoronaVirus) に属するウイルスであり、肺炎による低酸素症で死亡することが多いのですが、中国からの報告では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が単なる呼吸器疾患ではなく、全身疾患であることが強調されていました。
2020年令和2年2月になると、自分の勤務するクリニック(平塚駅近く)でもインフルエンザの受診はほとんど無くなり、替わって例年冬季に流行する(ノロなどによる)ウイルス性胃腸炎に似ていますが、より重篤感が強く、臨床経過も異なる腹部消化器症状の患者が多数受診するようになりました。
中国からの報告のおかげで、(呼吸器症状のない患者であっても)すぐに新型コロナの消化器症状を疑うことができ、保健所を通じてPCR検査を受けてもらいました。
しかしCOVID-19を疑う症例が増えるにつれて、次の特徴に気付きました。
こうした特徴を、整合性をもって一元的に説明するためには 『この地域には、呼吸器感染能力を失った新型コロナウイルスの亜型が流行しており、亜型による呼吸器症状の無いCOVID-19が多く発生している』 と考えざるを得ませんでした。
(注:医学的には、PCR検査等はあくまで診断のための補助検査という位置づけであり、検査結果でCOVID-19なのかCOVID-19でないのか、診断が確定するわけではありません。診察した医師による総合的判断が診断であり、検査結果そのものは偽陽性や偽陰性と判断されることもあります。COVID-19疑似症は「COVID-19ではない」という意味ではありません。)
そのころ(2020年令和2年5月)、上久保・高橋の集団免疫説が紹介され、ウイルス干渉のため日本でコロナ騒動が始まる何か月も前からインフルエンザ患者の発生数が減少していたことを知りました。
そこで、自分の勤務先のクリニックでも調べると、実際にインフルエンザの受診者数が例年の半分に減っていたことを確認できたので、もしかすると新型コロナ亜型(湘南コロナ)の流行している地域では、ウイルス干渉のためPCR陽性率が低くなっているかもしれないと考えて、神奈川県発表データの収集・分析を開始しました。
自分の勤務するクリニックを受診する患者の情報から、神奈川県南西部相模湾沿いから箱根に至る一帯で湘南コロナの流行していることが推測されていました。
神奈川県の新型コロナ流行の第1波(2020.01.15~2020.05.25)と、第2波(2020.05.26~2020.10.31)とを比較すると、第1波のときは神奈川県南西部でも多くの新型コロナ患者が発生しているのに、第2波になると発生が抑えられていて、この地域で『他の地域より強い集団免疫』が働いているのを確認することができました。
この『他の地域より強い集団免疫』は、湘南コロナの流行拡大によってもたらされたと考えられます。(2021.01.30)
以下、分析結果の一部を紹介します。次の順番に図示します。
図 1a 神奈川県の市町村と保健管区の境界
図 1b 神奈川県の保健管区
図 2 神奈川県のPCR陽性者数の推移(神奈川県、毎日、2020.01.15~12.31)
神奈川県の市町村毎に、一定期間の累計陽性者数を2020年令和2年7月1日時点の人口で割って得た累計陽性率(累計陽性者数/人口×10000)を計算し、「県内のほかの市町村と比べて多いの?少ないの?」という相対的関係が分かりやすいように地図を5段階で色分けしています。
図 3a 神奈川県の第1波前半(2020.01.15-04.17)
神奈川県では4月17日以降、市町村毎の陽性者数発表が始まりました。中国武漢から直接日本に来た新型コロナウイルスの上陸地点(=湘南コロナの上陸地点?)推測のために、4月17日をひとつの区切りにしています。
図 3b 神奈川県の第1波後半(2020.04.18-05.25)
図 3 神奈川県の第1波全体(2020.01.15-05.25)
図 4 神奈川県の第2波(2020.05.26-10.31)
以上の図を比較すると、『神奈川県南西部(平塚保健管区と小田原保健管区)では、第2波の流行期に、他の地域よりも強い集団免疫が働いているのではないか』と疑うことが可能です。
平塚市のJR東海道線沿いに位置する診療所外来を受診する患者から得られた臨床的知見と、神奈川県の発表する市町村毎の陽性者数発生状況の結果が一致したことにより、2020年末の時点でウイルスが分離されていないにもかかわらず、湘南コロナの存在は確定的となりました。
その後、2019年令和1年12月以降に受診した患者の再診等により、湘南コロナの最初の患者発生は2019年12月末まで遡ることができています。湘南コロナが中国で出現したのか、日本に上陸してからの変異で出現したのかは不明です。(2021.01.30)
問診票:▶ ▶ ▶
説明(2020.04.07):▶ ▶ ▶
説明(2020.04.16):▶ ▶ ▶
説明(2020.04.28):▶ ▶ ▶
説明(2020.05.13):▶ ▶ ▶
説明(2020.06.07):▶ ▶ ▶
説明(2020.06.13):▶ ▶ ▶
説明(2020.08.13):▶ ▶ ▶
説明(2020.08.15 補足):▶ ▶ ▶
説明(2020.08.24):▶ ▶ ▶
説明(2020.10.04):▶ ▶ ▶
説明(2020.10.09):▶ ▶ ▶
説明(2020.11.08):▶ ▶ ▶
説明(2020.11.29):▶ ▶ ▶
説明(2020.12.09):▶ ▶ ▶
説明(2020.12.10):▶ ▶ ▶
説明(2021.01.03):▶ ▶ ▶
説明(2021.01.08):▶ ▶ ▶
説明(2021.02.01):▶ ▶ ▶
説明(2021.02.14):▶ ▶ ▶
・・・・・作業中
続く・・・・・・