ここでは、mRNAワクチン効果の多国間比較について補足説明を行います。
2020年(令和2年)1月22日~2022年(令和4年)12月8日までの約3年間のデータを、Our World in Data より得て比較のグラフを作成しました(上段図:接種率、下段図:感染率)。
比較したのは、日本、イスラエル、南アフリカの三か国です。
上段図はmRNAワクチンの接種率、下段図は感染率です。細かな定義( :▶ ▶ ▶)を見ても厳密なことは不明ですが、ここでやりたいことは大きな動向の比較なので細部にこだわらなくてよいでしょう。
下段図の「1~7(赤字)」は、日本における流行波の呼称番号です。
◆ 最初にイスラエルの動きを見ます。
[下段図] 日本の1波~3波に相当するころ、イスラエルでは感染による大きな被害が出ました。波の高さを日本と比較してください。
ちょっと差がありすぎて、比較が難しいですね。
日本の1波~3波の時期を少し拡大してみます(↓)。
まだ日本の波の山が分からないので強拡大してみます(↓)。
日本、スゴかったのです! ファクターX、スゴかったのです!。日本だけでなく、東アジアは日本と似たような感じでした。
最初の図に戻ります(↓)。
[上段図] イスラエルは世界に先駆けてmRNAワクチンの接種を開始しました(最初の大きな山が1回目と2回目の接種です)。
[下段図] その成果は、日本の第4波に相当する頃に得られました(黒い破線で示しています)。
ワクチン接種により、イスラエルの感染状況は、ワクチン未接種の日本並みに減りました。
この頃は、ワクチンで作られる抗原と流行しているウイルスの抗原とがよく合致していて、ワクチンの効果がスゴかったのです。
ところが、日本の第5波に相当する頃には、イスラエルで再び大きな流行がおこり、mRNAワクチンの効果がほとんど消えました(上段図2つめの山がイスラエル3回目の接種です)。
これはウイルスが大きく変異し、ワクチンで作られる抗体の効果が無くなったためです。
同じ抗原性を用いるワクチンの接種が世界的に進んだため、ウイルスはワクチンの抗体を避ける(免疫逃避変異 immune escape mutations)を起こしていました。
イスラエルは4回目の接種も行いましたが、接種率の山はずいぶんと小さくなりました。イスラエルでの接種者はどんどん減っていったようです。
日本の第6波に相当する頃、イスラエルでは大流行しましたが、これはちょうどオミクロン株の流行開始だったので、肺炎になって死ぬ人は少なくなりました。。
ウイルスの変異に対応できる根本的な改良が施されない限り、イスラエルはmRNAワクチンの積極的接種には戻ってこないでしょう。
◆ 次に、日本の動きを見てみましょう。
[下段図] 2020年令和2年の流行の大きさを比較すれば、日本にワクチン接種を導入する必要性のないことは誰の目にも明らかでした。
しかし、日本は2021年にワクチン接種を開始します。
上段図と下段図を比較してみると、ワクチン接種開始後は日本における流行の波がどんどん大きくなっている のがわかります。
◆ 最後に、南アフリカの様子を見てみましょう。
いろいろなお国事情によりワクチン接種率は低いです。日本やイスラエルで見られるような接種の山はなく、ダラダラ、ダラダラと接種事業をやったのでしょう。
コロナの流行は、接種開始前から日本よりは大きな波を作っていましたが、5~6回の流行の後は・・・・流行が無くなったようです。
おそらく未接種者の自然な感染でバランスの取れた免疫が作られ、コロナが流行しづらくなったと考えられます。
日本におけるmRNAワクチンの導入は、コロナの感染予防という面から見れば「大失敗」だったと言えるでしょう。
しかし、これは別のところで触れますが、mRNAワクチンの導入には感染症とは直接関係のない大きな目的があるので、その目的から見ると人口の8割に接種できたことは「大成功」なのです。