免疫逃避変異 immune escape mutations について手抜き説明します。
ウイルスが複製・増殖しているとき、その遺伝情報はある確率で必ず変化します。
「必ず?」
そう、必ずです。
理由は簡単です。
環境は常に変化しています。変化しないウイルスは、いつかは新しい環境に不適応となり滅亡します。滅亡せずに残っているのは確率的な意味で「常に変化しているウイルス」です。
元祖武漢株が大流行しているときも、必ずたくさんの変異ウイルスが発生しています。
一般的には、環境にうまくあって大流行しているウイルス株の変異体の多くは環境適応に失敗して消滅しています。
先行感染、あるいはワクチン接種などで流行株に有効な抗体が体液中に大量に存在すると、「めちゃくちゃ強力な免疫状態」となります。
具体的に言うと、コロナのスパイクのRBDヘッド領域にガッチリと結合する抗体(強力なウイルス中和抗体)が体液中にたくさんあると、ウイルスはまったく感染できない状態になります。
大流行株は増殖できなくなり、ワクチン接種は大きな成果を得ます。初めてファイザーのmRNAワクチンを導入した直後のイスラエルを見るとよいでしょう。
しかし、特定の抗体が存在するという環境に適応して増殖できる変異体が必ず出現します。
新しい変異株が大流行し始めたとき、体液中にある古い抗体は何の役にも立ちません。新しい変異株は大流行に成功します。
哀しいことに、免疫刷り込み(≒ 抗原原罪)が働くので、ワクチンに少々の変更を加えても変異株に強力に効く抗体を産生させることはできません。
現時点のワクチン技術では、ウイルスの変異と流行を予測して最適の抗体を流行前に準備させることはできません。
陰謀論の時代に合わせて正確に言うと、「変異ウイルスと対応したワクチン」を同時に開発すれば、予測の成功を装うことは可能です 😊。