自然な感染後のワクチン接種 する? しない? するならいつする?

 接種時期選定の参考 

 補足説明:感染後の抗体価 

 

 案 内

 このページは「接種時期選定の参考」ページの補足説明を収めています。

 ここでは、コロナ感染後の抗体価について補足説明を行います。

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 倉持呼吸器内科の発表データ

 栃木県宇都宮市にあるインターパーク倉持呼吸器内科は、(多くの診療所等が発熱患者の受診を拒否する中で)コロナ流行初期より発熱患者の積極的受け容れを開始しています。

 倉持仁(くらもちじん)院長は、2020年(令和2年)3月から Twitter を利用した情報発信を開始しています。

 mRNAワクチンの効果について、私の考え方と倉持医師の考え方は異なっています(:異なる視点を持っているということは、とても重要なことです)。

 診療と経営でとても忙しいのに、倉持医師は診療で得た貴重なデータを発表してくれるので、そうしたデータをふだん見ることのできない人々にとって、とてもありがたい存在です。

 

 まずは、倉持医師の Twitter アカウントの紹介です(at 2022.11.08)。

 

 

 

 次に、2022年令和4年9月12日のツイート(つぶやき)を紹介します。

 

 

 臨床データの部分は、パソコン画面をそのままスマホでスクショした画像です。

 忙しい中、パソコンでさっとグラフを作成して、取り急ぎスクショしての発表だと思われます。本当にありがたいことです。

 

 

 見えにくいので、写し取って下図を作りました。

 

 

 感染後何日目の採血検査だったのか、接種者は何をいつ接種したのか、感染者の年齢など、詳細に検討するために必要な情報はないのですが、このデータから大雑把にわかることを列挙します(新しい知見ではありません。従来からわかっていたことが確認されただけのことですが、再確認は重要です)。

  1.  未接種者が感染しても抗体が産生されない
  2.  接種者が感染したら抗体が産生される

 

 オミクロン株(初期流行型)感染者の多くは軽症です。

 未接種者のコロナ感染の場合、軽症では抗体が産生されないと(昔からある風邪コロナでも、新型コロナでも)言われてきましたが、オミクロン株でも同じことが言えるということです。

 グラフには、未接種なのに抗体がたくさん作られている人がひとりいます。きっと中等症以上の症状だったのでしょう(推測)。こうした抗体産生は数か月から数年以内に止まるようです。ヒトの自然な免疫は、コロナに罹って抗体産生ができるようになってもそれを止め、抗体無しで次のコロナ感染に備えようとします。

 グラフには、接種者なのに抗体産生の無い人や少ない人もいます。その原因には興味がありますが、症状等のデータがないのでここでの考察は難しく、可能性をひとつ紹介しておきます。

 軽症コロナに対する自然な免疫は抗体を産生しません。コロナウイルスは感染後、数カ月から(長ければ)1年近く身体内に留まりますが、そういうときにmRNAワクチンを接種しても抗体の産生されないことがあるようです(私もそういう患者を診たことがあります)。接種前の感染で立ち上がった免疫が、接種によるコロナ抗原刺激に対しても抗体を産生しないように、抑制的に作用した可能性が考えられます。

 一方で、感染後のワクチン接種でスゴい抗体産生状態になることも知られています。(参考記事→ COVID回復後のワクチン接種がもたらす「スーパー免疫」の謎 (2021.10.21、nature ダイジェスト Vol.18 No.12))

 

 さて、倉持医師はこのグラフを見て「mRNAワクチン未接種だと、たとえコロナにかかっても抗体が産生されず、したがって次のコロナ感染に対する予防力も弱いままになってしまうのでmRNAワクチンはきちんと接種しましょう」といった感じのことを主張されています。

 多くの人々の健康を願っての発言です。

 私も2020年の夏以前、コロナに対する免疫が風疹などに対する免疫とはかなり異なっていることを知る前は、倉持医師と同じような抗体中心の考え方をしていました。軽症コロナでは抗体ができないことなど、ふつうの臨床医は知りません。

 

 詳細は「接種時期選定の参考」で説明しています。

 

 【注】: 後に、次のことが判明しました。

 倉持呼吸器内科での抗体検査で未接種者の多くが陰性になったのは、抗体検査に用いた抗スパイク抗体検査キットがオミクロン非対応であった可能性が大きいと考えられます。

 この問題についての詳細は、「口述原稿 Part 9.感染例について」を参照。

 

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