この「3-5.感染例からコロナの免疫を知る」は、日本人にワクチンが必要かどうか、またどんなワクチンが良いのかを本格的に検討したい人向けの内容です。
感染例は、合計3回コロナに感染した私自身のことです。感染した自分を徹底的に調べました。その中で理解したmRNAワクチンのメリット・デメリットを紹介していますが、mRNAワクチンよりも弱毒化生ワクチンがはるかに優れていることも説明しています。私自身は生ワクチン願望派です。
「3-5.感染例からコロナの免疫を知る」は、私が最もお金と労力(と知力?)を注ぎ込んでいるページです。
「mRNAワクチン未接種 + コロナ SARS-CoV-2 感染3回」の抗体検査やウイルス中和試験の結果を紹介します。
コロナ 感染歴 |
発症年月 | 種類 | 元々の 呼び方 |
抗体 検査 |
中和 試験 |
1回目 | 2020年夏 | 湘南コロナ (おなかのコロナ) |
[ー1]度目 | ○ | ✕ |
2回目 | 2023年1月 | オミクロン BA.5 |
1度目 | ○ | ○ |
3回目 | 2024年1月 | BA.2系 XBB.1系? BA.2.86.1系? |
2度目 | ○ | ○ |
私が1回目の感染([-1]度目の感染)があったことに気づいたのは、3回目の感染のあとです。気づくまでは、2回目の感染を自分のコロナ初感染(1度目の感染)だと思い込んでいました。
2回目の感染後(1度目の感染後)に受けた抗体検査で「抗N抗体:陽性、抗S抗体:陰性」という結果になり、初感染後の検査結果としてはありえないことだったので困っていたのですが、3回目の感染後に抗体検査や中和試験で「免疫刷り込み(≒抗原原罪)」が確認されました。
そこで、2回目の感染(1度目の感染)が本当は初感染ではなく、そのために免疫刷り込みが起こっていたと考えれば「抗N抗体:陽性、抗S抗体:陰性」という結果も自然な現象として理解できることがわかり、過去をさかのぼって1回目の感染([-1]度目の感染)を再発見しました。無症状感染ではなく、軽いけれどコロナ特有の印象に残る症状があったので再発見につながりました。
そこで、もともとは1回目の感染のことを [-1]度目の感染 と呼んで免疫応答を研究し、記録していました。
しかし、その記録が膨大な量となったため、免疫刷り込み(≒ 抗原原罪)を理解することに焦点を絞って編集しなおすことにしました。また、わかりやすいように [-1]度目 を1回目としました。
このページ「3-5.感染例からコロナの免疫を知る」の目的は、免疫刷り込み(≒ 抗原原罪)の具体例を通じてコロナ免疫におけるmRNAワクチン(初期型)の効果と限界を知ることです。
この知識は、自然な感染後のワクチンの種類の選択や接種時期の選定などに役立つでしょう。
なお、「3-1.免疫学の基礎」と「3-2.コロナウイルスの構造」で紹介した知識を前提として説明します。
3-5-1.コロナ(1回目)
3-5-2.コロナ(2回目)
3-5-3.コロナ(3回目)
3-5-4.免疫応答(1)
3-5-5.免疫応答(2)
3-5-6.抗N抗体悪玉説
このページ「3-5.感染例からコロナの免疫を知る」は、最初に作った「補足説明7:感染例」以降の情報量が莫大なものになったので、それを読みやすく編成し直したものです。
あえて最初の説明で詳細を見たい方はコチラ:「補足説明7:感染例」→「補足説明8:2度目の感染」;医学関係者以外はチラッと見るだけに留めましょう、全部読もうとすると吐き気を催して必ず後悔します。🤮 データを得られた当時の解釈などにはマチガイがありますが、それは思考過程なので、修正しないでそのままにしています。
以下は 「補足説明7:感染例、補足説明8:2度目の感染」からの抜粋 となります。
2019年令和元年12月に中国武漢で始まったコロナ流行は、2020年令和2年1月には日本にも拡がりました。
日本で最初に陽性者が出たのは神奈川県です。
私は当時、神奈川県平塚市の小さなクリニックで働いていました。
当時、神奈川県南西部では少し変わったコロナが流行し始めていました。
それは、呼吸器感染を起こさず、肺炎にならないこと以外は普通の新型コロナと同じだったので「おなかのコロナ(湘南コロナ)」と呼んでいました。
2020年令和2年の夏の夜、ソファに腰掛けていると、キリキリっと腸管を電気が走るような小さな痛みがありました。ほんの数秒間の出来事です。
その痛みの性質は、「おなかのコロナ」の患者から聞いていた腹痛と同じだったので、「あぁ、例のウイルスが腹に居るな」と思いました。
同じようなことが、(おそらく?)1~数週間後に、もう1度ありました。初めて体験する特徴的な痛みだったので、2度起こったということは覚えています。
このキリキリっという痛み以外には目立った症状が無かったのですが、後にこれが私の最初のコロナ感染 COVID-19 だったことが判明しました。
コロナでは血栓ができやすくなり、胃腸では虚血性腸炎のような病変がおこるようです。
キリキリっと電気が走るような痛みは、腸管の小さな虚血(による酸素不足等)で生じる痛みのようです。
「おなかのコロナ」で胃カメラや大腸カメラによる精査を受けた患者は少なくありませんが、胃腸の粘膜面にはほとんど異状の無いことが多いようです。
胃腸に分布する細い動脈内で血栓症などが起こっているようです。
私に、その痛みがあったということは、粘膜面から発する痛みではないので、身体内部でウイルスが暴れていたということであり、私は感染していたということになります。
2021年令和3年6月16日、私はコロナの抗体検査を受けました。「おなかのコロナ(湘南コロナ)」に特徴的な腹痛の9~10か月後のことです。
当時、職場のスタッフがmRNAワクチン接種(ファイザー社製:コロナ武漢株のスパイクをコードするmRNAを持つ)の初回接種(1回目と3週間後の2回目)を終え、スパイクに対する抗S抗体がちゃんとできているかをチェックしていました。
私は、患者との濃厚接触を繰り返しても感染しなかったので免疫があるだろうと考えて医療機関用のmRNAワクチンを接種しなかったのですが、その免疫を確認するために抗体検査を受けました。
「おや!、抗体が無いぞ」と私は焦り、住所のある自治体でのmRNAワクチン接種を準備するとともに、コロナの免疫についての勉強を開始しました。
これは3年後(2024年4月頃)に明らかになったことですが、このとき私の血液中には「おなかのコロナ」に対する抗体がちゃんと作られて存在していたようです(感染後1年近くたつので量は減っていますが)。
この当時用意されたコロナ抗体の検査キットは「武漢株」のスパイクに対する抗体を検出できるように開発されたものであり、大きく変異したスパイクに対する抗体を検出することはできなかったようです
呼吸器系の細胞に感染できない「おなかのコロナ」のスパイクは「武漢株」とは抗原性の大きく異なるタイプなので、一般的な検査キットでは検出できなかったのです。
もし仮に2020年令和2年の夏「おなかのコロナ(湘南コロナ)」に感染した数か月後に、このコロナに対応した抗体検査とウイルス中和試験(感染研法)を受けることが出来ていれば、検査結果は次のようになっていたでしょう。
SARS-CoV-2 感染1回目 |
湘南コロナ (おなかのコロナ) |
||||
抗N抗体 湘南用* | (+) | ||||
抗S抗体 湘南用 | (+) | ||||
湘南コロナ 中和試験 | ×1280 | ||||
抗N抗体 武漢用* | (+) | ||||
抗S抗体 武漢用 | (-) | ||||
武漢株 中和試験 | ×5 未満 |
*:「Nタンパク」は変異が少ないので、何株用であっても検出可能です。
これは、2023年令和5年1月の COVID-19(2回目)および2024年令和6年1月の COVID-19(2回目)のときの検査結果から推測される検査結果です。
やはりその推測過程から順番に見たいという方は:「補足説明7:感染例」それはやめたほうがよいでしょう。
1回目の感染後の検査結果としては、大きく外れてはいないと考えられるので、今後はこの推測値を用います。
以上、抗体が出来ていた前提で説明しましたが、あるいは「3-4-3.感染しにくい人の免疫」のように、抗体は産生されず(しかし記憶B細胞は作られる?)、細胞性免疫だけが強化されていた可能性も考えられます。
2021年令和3年の10月から、私は地域の中核的位置づけとなる病院の発熱外来で診療に従事し始めました(月・水・金)。
1回目の感染(2020年令和2年の夏)から1年以上過ぎており、SARS-CoV-2 の感染で得た免疫力はかなり低下していたはずです。
療養説明のために、コンテナ内のビニールカーテンで仕切られた狭い区画の中で、コロナ患者と10分以上一緒に過ごすということを、多い日には10数回以上することもありますが、感染は起こりませんでした。
2023年令和5年1月8日(日曜)の夜、私は 急に発熱 し始めました(その時の最高が38.2℃)。
当時の発熱外来にはコロナ患者も、インフルエンザAの患者もいました。そのどちらかによる発熱の可能性がありました。
1月9日(日曜)、朝になっても解熱せず。体温は 37 ℃ 台後半で上がったり下がったりを繰り返しました。
抗原検査 | キット | COVID-19 | Influenza A, B |
2023.01.09 | 研究用 | (+) | (-) |
2023.01.10 | 医療用 | (+) | (-) |
このときの圧倒的流行系統は「BA.5」でした。(:3-3-3.令和5年2023年1月頃の変異)
その後の1年間に受けた抗体検査およびウイルス中和試験(BA.5)の結果は次の通りです。この表では左から右に向かって時間が経過しています。
SARS-CoV-2 感染2回目 | BA.5 | ||||
発症後の経過日数 | 15 | 24 | 66 | 85 | 339 |
抗N抗体 | (+) | (+) | (+) | (+) | |
陰性<1.0 COI* | 2.8 | 27.7 | 44.8 | 7.8 | |
抗S抗体 | (-) | (-) | (-) | ||
陰性<50 AU/mL(Abbott**) | 9.8 | 43.1 | |||
陰性<0.8 U/mL(Roche) | 0.6 | ||||
BA.5 中和試験(感染研法) | ×10 |
* :COI の 10.0 は 1.0 の10倍抗体量があるという意味ではありません。Cut Of Index という特殊な半定量的単位です。
** :アボット社の抗S抗体検査キットは武漢専用であってオミクロン非対応であることが判明し、オミクロン対応のロシェ社に変更して陰性であることを確認しました(陰性判定の基準もキットごとに異なります)。
参照(ウイルス中和試験):▶ ▶ ▶
コロナウイルス(SARS-CoV-2)の「抗N抗体:陽性、抗S抗体:陰性」、つまりヌクレオカプシド(N)に対する抗体は作られていますが、スパイク(S)に対する抗体は作られていません、という結果になりました。
これは「おなかのコロナ(1回目の感染)」によって「免疫刷り込み(≒ 抗原原罪)」が起こったからです。
「抗S抗体無し」という極端な結果となったのは、「おなかのコロナ」のスパイクと「オミクロン株」のスパイクの間に共通エピトープがほとんど無かったということを意味しています。
何度も何度も測定を繰り返したのは、当時は「おなかのコロナ」に感染していたという自覚がなく、オミクロンが初めてのコロナ感染だと信じ切っていたからです。
初感染ならば「抗N抗体:陽性、抗S抗体:陽性」となるはずです。
時々、軽症状の場合は「抗N抗体:陰性、抗S抗体:陰性」と抗体産生の無いこともあるようです。
また、このころ 抗N抗体が多いと重症化しやすい という「抗N抗体悪玉説」が提唱され始めていて、これはヤバいということで詳しく調べることになり、ウイルス中和試験も受けることになりました。
2024年令和6年1月28日(日曜)、2回目の感染からちょうど1年後、微熱が始まりました。1月29日の夕方に37.6℃、これが熱のピークでした。
抗原検査 | キット | COVID-19 | Influenza A, B |
2024.01.29 | 研究用 | (+-) | (-) |
2024.01.30 | 研究用 | (+) | (-) |
2024.01.31 | 医療用 | (+) | (-) |
このときの流行系統は「XBB.1 系」と「BA.2.86.1 系(JN.1 等)」の2つに分かれていました。いずれも「BA.2 系」です。(:3-3-4.令和6年2024年1月頃の変異)
その後に受けた抗体検査およびウイルス中和試験(BA.5 と XBB.1.5)の結果は次の通りです。
SARS-CoV-2 感染3回目 | BA.2系(XBB.1系/BA.2.86.1系) | ||||
発症後の経過日数 | 24 | 31 | |||
抗N抗体 | (+) | ||||
陰性<1.0 COI | 51.4 | ||||
抗S抗体 | (+) | ||||
陰性<0.8 U/mL(Roche) | 183.0 | ||||
BA.5 中和試験(感染研法) | ×40 | ||||
XBB.1.5 中和試験(感染研法) | ×5 |
1回目から3回目までの抗体検査および中和試験の結果をまとめると次の表になります(おなかのコロナ=湘南コロナに対応した検査は無いので、結果は、もし検査があったならばこういう結果になっていただろうという推測値です)。
SARS-CoV-2 の感染による COVID-19 歴 |
1回目 | 2回目 | 3回目 | |||||
2020.夏 | 2023.01.08 | 2024.01.28 | ||||||
変異種 | 湘南コロナ | BA.5 | BA.2系 | |||||
経過日数2回目 | 15 | 24 | 66 | 85 | 339 | 409 | 416 | |
経過日数3回目 | 24 | 31 | ||||||
抗N抗体 C.O.I |
(+) estimate |
(+) 2.8 |
(+) 27.7 |
(+) 44.8 |
(+) 7.8 |
(+) 51.4 |
||
抗S抗体 :湘南対応 |
(+) estimate |
|||||||
抗S抗体 :武漢専用 |
(-) | (-) | (-) | |||||
抗S抗体 :オミクロン対応 |
(-) 0.6 |
(+) 183.0 |
||||||
中和試験 :湘南 |
×1280 estimate |
|||||||
中和試験 :BA.5 |
×10 | ×40 | ||||||
中和試験 :XBB.1.5 |
×5 |
estimate:推測値
3回目感染時の流行系統は XBB.1 系と BA.2.86.1 系
臨床経過の簡略な比較
COVID-19 | 1回目 | 2回目 | 3回目 |
年月 | 2020.08? | 2023.01 | 2024.01 |
最高体温 | 38.2℃ | 37.6℃ | |
発熱期間 | 6日間 | 2日間 | |
初期症状 | 腹痛2回 | 重い | 軽い |
急性期症状の完治 | 遅い | 早い | |
倦怠感消失 | 24日目 | 強い倦怠感は無し | |
強い免疫抑制 | 数か月間認めた 花粉症症状の軽減や 自己免疫性皮膚炎の 一時的治癒など |
||
体重回復 | 食事再開で すぐに回復 |
数か月間体重が 回復せず |
|
LongCOVID 様の不調 |
無し | 無し | 1か月後~8か月後 |
では、この3回感染のケースで免疫系に起こったことを見ていきましょう。「3-5-4.免疫応答(1)」は液性免疫(抗体)中心に見ていきます。
「武漢株 → P株 → Q株」と感染した場合を想定し、免疫全体の応答を見ていきます。「3-5-4.免疫応答」を一般化します。
抗N抗体がたくさんあると、マクロファージによるNタンパクの貪食が促進され、大量のサイトカイン分泌が誘発されることで重症化しやすいという説があります。
この説は正しいと考えられますが、生身の人体内では、抗N抗体によるワルサは他のメカニズムによって抑制されていると考えられ、臨床上はそれほど心配する必要はないと考えられます。
一般の方はパスして問題ないと思われます。
具体的な臨床経過や実際の検査報告書を見たいという方は「補足説明7:感染例」へ:▶ ▶ ▶(補足説明7:感染例 → 補足説明8:2度目の感染)一般の方は、報告書などの写真を見るだけに留めましょう。説明は読まない。読むと地獄を見る 😭